ドクターズアドバイス

元気の樹

No.2 母乳を科学してみよう

「赤ちゃんにはおっぱい」「いつでもどこでもおっぱいは楽チン」こんなイメージもっていませんか?そのとおりなんです!

WHOをはじめ世界の多くの保健機構が生後6カ月までは母乳のみで赤ちゃんを育てることを勧めています。日本の厚労省の調査では、出産前の女性の96%は「できれば母乳で育てたい」希望を持っていますが、生後1か月での完全母乳率は44,8%、6カ月では20,9%に減少しています。

Healthy People 2010(アメリカ政府が国民の栄養・健康向上のために打ち出した目標)でも開始時70%、6か月50%、1歳25%が目標値ですが、実際はその半分程度の到達度です。

希望しているのに続かない現実、なぜ母乳のみを勧めるのか、母乳の科学を知ることにより、母乳育児のモチベーションが高まることを願います。

母乳育児がママにもたらすメリット

  1. 出産後の出血量の減少

    赤ちゃんが乳房を吸啜するとオキシトシンというホルモンが分泌されます。このオキシトシンによって子宮収縮が促され、出産後の出血量を減少させます。オキシトシンは子宮収縮だけでなく母乳分泌を促進し、その抗ストレス作用により、「ママと赤ちゃんの絆を深める」と報告されています。子供の生存にとって有利に働くホルモンというわけですね。

  2. ママの健康保持、自然な避妊

    母乳育児により排卵の再開が遅れ(妊娠の間隔が開く)、産後の回復を促します。また月経が戻るのが遅れることで血液の喪失を防ぐことができます。母乳育児を行っている場合、妊娠中に増加した体重をより早く(通常05〜1kg/月)減量できるとも言われます。自然のダイエットですよね。

  3. がんの減少、骨粗鬆症のリスク低下

    2か月以上母乳育児をおこなったママは、乳がん、卵巣がん、子宮体がんの発がんリスクが有意に低下しています。

母乳育児が赤ちゃんにもたらすメリット

  1. 疾患予防効果

    先進国、発展途上国ともに、母乳育児により、細菌性髄膜炎、菌血症、下痢、呼吸器感染症、中耳炎、尿路感染症といった多くの感染症の発症率と重症度が抑えられ、その他SIDS、小児がんなどの発症率を低下させることも示唆されています。アメリカにおける検討では母乳で育てられている乳児は新生児期以後の乳児死亡率が21%低下すると報告されています。

  2. 予防接種

    母乳育児はワクチン抗原に対する免疫反応を高めます。すなわち予防接種の効果が高いといっていいでしょう。

  3. 発達

    母乳で育った児の方がミルクで育った児よりも認知能力(IQ)が高いという複数の報告があります。これはDHAやEPAといった母乳中に含まれる多価不飽和脂肪酸(大脳皮質に局在するリン脂質)が関係するといわれています。

  4. 生活習慣病との関連

    母乳とミルクの成分の大きな違いの一つは、蛋白の質と量です。ミルクによる生後早期の高蛋白摂取はのちの脂肪沈着に影響し、成人期の体重増加と肥満を示唆します。母乳育児はその後の人生において肥満予防に関与する重要な鍵となります。

ママへの最高の贈り物

母乳って経済的、楽チンそれだけではないんですね。自信を持って継続しましょう。
授乳によって分泌されるオキシトシンは「ママと赤ちゃんの絆を深め、授乳の繰り返しが苦にならなくなる」ママへの最高の贈り物ですから。