ドクターズアドバイス

元気の樹

No.6 今年のインフルエンザ対策

今年の特徴は?

昨シーズンは新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行で、多くの混乱がみられましたが、日本は、世界の中でも被害を最小限に抑えることができた国です。これは感染拡大防止に向けて、医療機関、学校、家庭などの連携がうまくいった結果と考えられます。

今年は、昨年影をひそめていた季節性インフルエンザ(A香港型)と新型インフルエンザのいずれも流行の可能性があります。A香港型は小児では脳症、高齢者では肺炎合併の注意が必要です。新型は比較的軽症の印象ですが、基礎疾患のない健康人でも発症早期に肺炎で重症化する人があることが判りました。現在の迅速検査ではA香港型かA新型かを区別する方法は普及していません。予防に心掛けるとともに、怖がらず、侮らず。

感染対策の基本は?

季節型でも新型でも感染対策の基本は変わりません。健康日本21推進フォーラムによる調査結果からは、子供が新型インフルエンザにかかった家庭の1/4が、ほかの同居家族にも感染が確認されました。飛沫感染が容易に起こり易い家庭での予防対策をより強化する必要がありそうです。

昨年の経験から、予防対策は浸透したように思います。シーズン前の予防接種と、こまめな手洗い、うがい、抗菌ジェル・スプレー、マスクの着用です。先の調査結果では、こどもの手洗い、うがいは徹底し、予防接種率も向上しました。しかし、母親自身は、手洗い、うがいまでは心がけても、外出時のマスクを面倒がる人が多数派で、予防接種率も高くはありません。

マスクは簡単で効果のある対策!

マスク内は吐く息の温度と水分で、空気が暖まり、湿度も上がります。この高温多湿な状態はインフルエンザのウイルスには苦手な環境で、外部から侵入しようとするウイルスを防御する効果があります。

またマスクを着用すると、冷たく乾いた空気が気道に入るのを防ぐため、のどや鼻の炎症がひどくなることを抑え、痛みや不快感を和らげます。 感染拡大防止のための「咳エチケット」としても不織布マスクの着用は重要です。くしゃみや咳でウイルスを周りにばらまかないよう、大人も子供もマスクをつけることを忘れずに。医療機関を受診する時も必ずマスクを着用しましょう。

治療薬での解熱とウイルス排出の関係は?

抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ)の早期使用によって、早く解熱し、症状が楽になること、合併症の頻度や程度を軽くすることは多くの方が認識されたと思います。しかし、たとえ熱が下がっても、5日分を使いきらなければウイルスが再び増殖し、感染源となる可能性があります。処方された分は必ず飲み切ることが大切です。今年、より早期の解熱を目指し、1回投与の吸入薬イナビルや点滴薬ラピアクタが発売されました。これらの薬剤でも、治療開始後3日目でもおよそ半数の人の鼻水にウイルスを認め、熱が下がってもウイルスが排出されていることは変わらないようです。自分の体を休めるためにも、感染拡大防止のためにも発病後5〜7日位は自宅療養を勧めます。とくに回復期、咳のひどい場合は要注意です。

小児科受診のポイントは?

地域内でのインフルエンザの流行、38度以上の急な高熱・悪寒、頭痛、関節痛・筋肉痛・強い倦怠感はインフルエンザを疑いますが、意識障害、呼吸困難、脱水などのサインを伴わない時は、慌てる必要はありません。水分補給をしながら安静を保ち、診療時間内にかかりつけ医へ受診してください。

視線が合わない、呼びかけに答えない(意識障害)、呼吸が速くて息苦しそう(呼吸困難)、水分が取れずおしっこが出ない(脱水)などの症状は、もう一度受診のサインです。

インフルエンザは比較的年長児でも熱性けいれんを起こす事があり 意味不明の言動や異常行動を起こす事も知られています。症状の変化を見逃さないためにも、発熱後2日間はこどもから目を離さない注意が大切です。

妊娠中・授乳中のママへ

基本的に妊娠中であっても授乳中であっても、インフルエンザワクチンの接種は問題ありません。かかってしまったら抗ウイルス薬の服用も可能です。また母乳中へのウイルスの排出は報告がなく授乳は可能ですが,飛沫や手指からこどもに感染させない注意(詳しくはこちら)が必要です。