ドクターズアドバイス

元気の樹

No.3 授乳中の食生活

授乳中だから薬が飲めない、授乳中だからお酒が飲めない、こんな声を良く聞きます。授乳中は風邪をひいても薬が飲めないのでしょうか。授乳中はビールもケーキも全く駄目なのでしょうか。

ママの授乳中の食生活を少し、考えてみましょう。

1. 薬

ママが飲んだ薬のいくらかは母乳中に出てきますが、その量は実際に赤ちゃんが飲む薬の量の1%未満といわれています。
風邪や花粉症などの一般的な薬の服用は授乳に差し支えありません。

新型インフルエンザにママが感染した時も、次の3条件をクリアしてから授乳する事が勧められています。

  1. 抗インフルエンザ薬を2日間以上服用している。
  2. 平熱になっていること。
  3. 咳や鼻水がほとんどないこと。

タミフル等を服用して早く回復することの方が大切ですね。

2. お酒(アルコール)

母乳中にアルコールが出てくる事は確かですが、飲む量や時間を工夫すれば赤ちゃんへの影響は最小限に抑える事が出来ます。ではどのくらいの量が目安でしょうか。

体重50kgのママであれば350mlの缶ビール1本またはワイングラス1杯は許容範囲と考えます。

またお酒を飲んだ後、30〜90分で母乳中のアルコールは頂点に達し、缶ビール1本であれば2時間半で体から抜けていきます。その時間は授乳を控えるといいでしょう。

3. タバコ

授乳中の喫煙は母乳産生量を低下させる事が知られています。ママ自身の体のためにも、受動喫煙にさらされる赤ちゃんのためにも、禁煙を勧めます。

残念ながら禁煙薬は、授乳における薬のリスク分類L4(悪影響を与える恐れあり)にあたり、妊娠中、授乳中は安易に使用する事ができません。

4. コーヒー

授乳中のコーヒーは1日に2〜3杯なら良いといわれています。ママが飲んだコーヒーのカフェインは、母乳中には15〜30分で最高値となり、半減期(薬物が体内から排出され、半分に減るまでの時間)は5時間程度です。

一方、新生児のカフェインの半減期は約100時間と圧倒的に排出が遅れますが、生後3〜5カ月になると14時間程度に短縮され、成長と伴にカフェインの代謝能力は向上していきます。言い換えれば、生後すぐの赤ちゃんほど体内にカフェインが蓄積し易いのです。

コーヒー以外にも日本茶、紅茶、コーラなどにカフェインは含まれています。取り過ぎには注意しましょう。カフェインレスコーヒー等の利用も良いかもしれません。

5. ハーブ製品

数々のものが販売されていますが、中には肝臓への毒性のため、先のリスク分類L5(禁忌)の物も報告されています。厳重な注意が必要です。成分不明なハーブ製品はとるべきではありません。

6. サプリメント

一時的に食事のバランスが悪くても極端な食事制限や菜食主義者でなければサプリメントは必要はありません。成分によっては取り過ぎによる過剰摂取の方が問題となります。

しかし鉄は、妊娠中、授乳中は非妊娠時より多く必要となります。鉄を多く含む食品を意識して取りましょう。それでも貧血が問題となる場合、母乳中への鉄の移行は非常に少ないため,(注射を含めて)鉄剤投与は問題ないと考えられます。

逆に、鉄の母乳移行が少ないという事を考えると、母乳のみで育っている赤ちゃんに対し、鉄欠乏のリスクを考えなければなりません。2500g以上満期産の乳児に関しては、生後6カ月までは鉄の補足は不要ですが、その後は補完食での鉄の摂取に気を配りましょう。

7. 嗜好品

カレーやガーリックなど刺激物で母乳の臭いや味が変化するという報告があります。しかし、それが赤ちゃんに悪いという訳ではなく、妊娠中にママが好んでいた物であれば、いつもより飲みがいいかもしれません。ケーキや油ものなどの高脂肪食も乳腺炎をおこしやすいといわれますが、はっきりした根拠はありません。

乳管のつまりを防ぐには脂肪を制限するより、効果的におっぱいを飲み取るためのポジショニング(抱き方)とラッチオン(含ませ方)を習得する事がより重要です。

授乳中だからといって基本的には極端な食事制限は必要ありません。逆に科学的な根拠を持って母乳のために良い食べ物というのもありません。バランスよく色々な食材を楽しみ、その楽しみを赤ちゃんに伝えたいですね。