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元気の樹
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元気の樹

元気の樹はわんぱくキッズクリニックの待合室の壁いっぱいに描かれた壁画です。
初めて医院に来る子どもたちやお母さんたちの「わぁっ」という驚きの声や、
スタッフたちの笑顔を誘います。
木の実を見るだけで元気になるように…、そんな祈りが皆さんに届きますように。

元気の樹・誕生エピソード
「非力な私に奇跡」(この壁画を描くにあたって)

マーティー田中

若い頃、何気なく見ていたテレビのニュース、街角の話題。ボランティアのおじさんがサンタの格好をして幼稚園の子供たちに小さなプレゼントを配っていた。
ボ〜ッと「子供たちは本当に喜んでんのかなぁ。いい事をした!と大人が自己満足してるだけじゃないのかなぁ…」と思った事があった。

時は流れ、私は2人の子供に恵まれた。世間並みに親ばかで、出張でアメリカに行った時、私にしてみればたいそうりっぱなサンタ用の銀髪かつらと髭セットをみやげにした。が小さな私に合うサイズのサンタ服がなかった為、なんとマント付きのすごいのを手作りで仕上げてしまった。サンタが誰であるのかまだ知らない我が子達の前でサンタになり上機嫌の私だった。

ひょんな事から知り合いになったオーストラリアからの留学生。まだ高校一年生。彼は何故か私をいたく気に入ったらしく学校の帰りや休みの日、毎日のように私を訪ね、悩みや楽しみをうれしそうに語るのだった。
ある日、いつも現れる時間なのに一向に現れない。どうしたのかと、心配しているとホームステイ先の方から連絡があり盲腸になってしまい緊急で手術したとの事、会いたがっているので見舞っていやって欲しいと言う。
時はクリスマスイヴ。
私はしばらく考えた。思えば彼はまだ十五歳。ツッパッていてもまだまだ子供。親元を離れ、たった一人で手術を受け、病室でどんなにも不安な事か。

しかも今日はクリスマスイヴだ。
思い切ってアノ服を着て元気付けようか。バカバカしいって笑うかなぁ。いやいやそんな奴じゃない。でも病院の人に「病院で不謹慎なっ!」と怒られるかなぁ…。

どうしても勇気の出ない私は一応サンタ服一式を持ち、プレゼントを持って病院に向かった。

白いベッドに横たわっていた彼。私の姿を見るやうれしそうに起き上がり、いきなり自分に降りかかった運命がどんなに劇的だったか、どんなに不安だったか一気に話しまくり、話し終わるころにはほっとしたのか、大きなため息をひとつ。
そして「クリスマス、楽しみだったのに」とポツンと言った。

決心した。
「勇気を持てっ!日本で一回だけのクリスマス。この子に淋しいクリスマスを過ごさせてはいけない。」
「ちょっと待ってて!」と言うと持参した大きな紙袋を抱えトイレに向かった。
そして私はサンタになった。
音程を外しながらもクリスマスソングを歌い廊下を歩いた。手には小さなプレゼント。私のへたくそな歌声が小さく廊下に響き一番奥の病室、やけに長い道のりだった。
その時の彼の顔ったらこれ以上うれしい顔はないってほど。そして彼はなんとナースコールを押してしまった。あわてて走ってきた看護師さんが「あっサンタだっ」と叫んだ。留学生君がサンタが見舞いに来てくれたので使い捨てカメラが欲しい旨を伝えると快く、しかも自分の分まで買って戻ってきた。
私は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
その後ナースセンターに案内され、看護師さんがドクターに「サンタクロースが来てるんですっ」などと電話するものだから、もう私はどこかに隠れたくてしょうがなかった。
果たしてドクターはやってきた。…カメラ持参で。
一通り写真撮影が終わると、看護師長が言った。
「お願いがあるんですが。あのぉ、病室を回って頂くわけにはいきませんか?」

「私なんかが行ってもお邪魔なだけで、ご迷惑なだけでは…」
看護師長の強い依頼にしぶしぶ大部屋や個室へと。

そこに待っていたのは患者さんたちの暖かな目だった。いきなり現れたサンタに大喜びしてくれて、誰もが私に手を差し出すのだ。私は両手で痩せた手をさすり、「絶対、絶対良くなりますよ」と自信なさげにオドオドと答えた。
そして次々と。
「ねぇ、サンタさん、僕の病気治るよねっ?」かわいい男の子がすぐ前に飛んできて、そう尋ねた。
いい加減な事を言ってはいけない。と思いながら私は満面の笑みで「治るとも」と抱きしめた。
その声は私の声ではない。サンタの声に違いなかった。

看護師長さんが「この部屋が最後です。」
そこには寝たきりの老人が静かに横たわっていた。鼻から管が通っており、指一本動かないと言う。看護師長さんがその患者さんの耳元に大きな声で「サンタさん、来てくれたよっ!良かったねぇ!」
私はこのようにお年を召した方がサンタを喜ぶのか不安であったが、近づいて、両手を差し出した。老人の目が私を見ているような気がした。
しばらく時間が止まってしまったような静かな空間。

そしてその時、震えながらもその手が私に近づいてきた。
看護師長は「あっ、動いたっ!」とひどく驚き「動くわけないのにっ!ちょっとドクター呼びますっ」
その硬い手が私の手をしっかりと力強くとらえた。
老人の目から涙が一筋流れ落ちた。胸がつまった。

その帰り道、私は心の衝撃をずっと味わっていた。
自分は何も出来ないと思っていた。サンタって家族でなくてもこんなに喜んでくれるんだ。私自身は何も出来なくても勇気を持ってサンタになった事で少なくとも、今日会った人達は心から喜んでくれた。
私がやらなければ今日の皆の思い出も自分の思い出もなかったんだ。
キラキラと美しいたくさんの瞳。元気づけようとした私は、元気づけられていた。

そして名前も知らない人達の健康を真剣に心より祈ることが出来る自分を知った。

私は毎朝子供たちにまとわりつかれ、幸せの香りの中で目を醒ましている。
やわらかく、かよわくも最高の宝物。この愛しく可愛い子供たちが病魔に苦しむなんて想像できないほど恐い。

壁画の話がきた時、即答でお断りしようと思っていた。
だってそんな大役を自分がするなんて。もっと素晴らしい方が沢山いらっしゃるから自分がしなくても…。
でも私が描かない場合はプリントになると聞いてしまった。
又あの時と同じ。勇気がなくて…。このままで。何もしないで。
熱が出て苦しい子が。おなかが痛くて泣ける子が。
そんな子供たちがほんの一瞬でもいい。「あっ、かわいいっ」って痛みを忘れる事が出来るかも。絵を見て一瞬でも痛みを忘れる事が出来たら。
そして子供たちに笑顔が戻ったら。

 

写真:壁に描かれた元気の樹「りんごの木」の依頼が来た。
アメリカではりんごを「医者いらず」と呼ぶ。一日一つりんごを食べれば医者はいらないと言う昔からの言葉だ。
素晴らしい依頼だ。
そうだ、どうせやるなら!

私はりんごの木をあえて、りんごの木のような伝説の木を描こう。
私の心の中にある伝説の木。
「げん木」と言う木。このげん木の木の実はそれを見るだけで元気になれるという。
そんな夢のような奇跡の木。

うまく描く事やきれいに描く事より私の使命は。

私の使命は一筆一筆、子供たちが一秒でも早く元気になりますように。
子供たちの痛みや苦しみが少しでも軽くなりますように。
心から祈りを込めて幸せの色を塗り重ねていくのだ。

私の力は微力かもしれない。でも勇気を出して踏み出せばどんなに微力でも何か役に立つかもしれない。
そして奇跡が起こる事を信じて。
祈りを込めて。

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